遥か遠い未来、地球はどのような姿になっているのでしょうか?私たちが住む大陸は固定されているわけではなく、数十億年という途方もない時間をかけて、ゆっくりと移動し、集まり、そしてまた分裂することを繰り返しています。この壮大な地殻変動の周期は「超大陸サイクル」と呼ばれ、およそ6億年から7億年ごとに、地球上のほとんどの大陸が集結して一つの巨大な超大陸が形成されると考えられています。
かつて、約3億3500万年前から約1億7500万年前にかけて存在した「パンゲア」大陸は、まさにこの超大陸サイクルによって誕生した巨大な陸塊でした。南半球に広がるゴンドワナ大陸と北半球のローラシア大陸が合体して生まれたパンゲアは、現在のすべての大陸の源となりました。
そして、今から数億年後、再び大陸が集結して新たな超大陸が誕生すると予測されています。その未来の超大陸に付けられた名が「パンゲア・プロキシマ」です。元々は「パンゲア・アルティマ(最後のパンゲア)」とも呼ばれていましたが、約2億年前に存在したパンゲア大陸と非常に似た形になると予測されていることから、「プロキシマ(ラテン語で「最も近い」の意)」という名が付けられました。
この未来の超大陸「パンゲア・プロキシマ」がどのような環境になるのかについて、最新の研究結果が学術誌『Nature Geoscience』に掲載され、科学界および一般の注目を集めています。以前から、パンゲア・プロキシマは内部に広大な砂漠地帯を持ち、動植物の生息には不向きな環境になると推測されていましたが、今回の研究はその予測をはるかに上回る、極めて過酷な世界を描き出しています。
新たな研究が予測する「灼熱と砂漠」の未来
イギリスのブリストル大学を中心とした国際研究チームは、最先端のスーパーコンピューターを用いた高度な気候モデルを開発し、パンゲア・プロキシマが誕生する頃の地球の気候変動を詳細にシミュレーションしました。
研究によると、超大陸が形成される地殻変動の過程で、大陸プレートの衝突や沈み込みといった大規模な運動が活発化し、地球内部からのマグマの供給が増加します。これにより、火山噴火の頻度が著しく高まると予測されています。大規模な火山活動は、地球の大気中に膨大な量の二酸化炭素(CO2)を放出します。
研究チームのシミュレーションでは、パンゲア・プロキシマの時代には、大気中のCO2濃度が現在のレベルの約2倍に達する可能性があることが示されました。CO2は非常に強力な温室効果ガスであり、その濃度が倍増することは、地球全体の平均気温を劇的に押し上げることを意味します。
さらに、パンゲア・プロキシマは、現在の地球の赤道付近に広がるような、高温多湿な熱帯地方に位置する形で形成されると考えられています。この地理的な配置と高濃度のCO2による温室効果が複合的に作用し、超大陸の内部、特に海洋から遠い広大な中央部では、常に気温が40℃から70℃という、生物にとって致命的なレベルに達すると予測されています。
このような超高温環境は、地球の多くの地域を広大な砂漠に変え、陸上生態系に壊滅的な打撃を与えると結論付けられています。哺乳類を含む多くの脊椎動物は、体温を調節する能力に限界があり、持続的に40℃を超える環境下での生存は困難です。特に、湿度が高い環境下では気化熱による冷却が難しくなるため、高温多湿な熱帯域の予測は、さらに生存を厳しくします。
興味深いことに、この未来の予測は、過去に地球で起こった大量絶滅の記録とも関連付けられます。約2億年前、パンゲア大陸が分裂を開始した時期にも、大規模な火山活動(中央大西洋マグマ岩石区のような巨大な火成岩地域を形成)が発生したことが知られています。この火山活動によって放出されたCO2や他の温室効果ガスが引き起こした急激な気候変動と環境悪化により、地球上の生物種の約90%が死滅したと考えられているのです(P-T境界絶滅に次ぐ規模とされるT-J境界絶滅)。
この過酷な大量絶滅期を奇跡的に生き延びた生物の中に、現在繁栄している哺乳類や鳥類、そしてかつて地球を支配した恐竜の祖先が含まれていました。彼らは厳しい環境下でも生き残れる適応能力を持ち合わせ、パンゲア大陸が分裂して形成された新たな大陸で再び生息域を広げ、多様化を遂げ、進化の道を歩みました。
しかし、今回の研究が示すパンゲア・プロキシマの超高温・CO2高濃度環境は、過去の大量絶滅期を凌駕するほど過酷なものとなる可能性を示唆しています。もしこの予測通りであれば、数億年後の地球は、哺乳類を含むほとんどの脊椎動物が生存できない、灼熱と砂漠に覆われた惑星になっているかもしれません。これは、プレートテクトニクスという地球本来のダイナミックな活動が、生命の存続にどれほど大きな影響を与えうるかを示す、驚くべき未来像です。
もちろん、これはあくまで一つの気候モデルによる予測であり、未来の地球環境を決定する要因は他にも多数存在します。しかし、超大陸サイクルの研究は、地球の過去、現在、そして未来が、地質学的プロセスと生命の進化によっていかに深く結びついているかを改めて私たちに教えてくれます。
未来のプレート運動とパンゲア・プロキシマの形成に関するアニメーションはこちらでご覧いただけます。
Future Plate Motions & Pangea Proxima – Scotese Animation
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