「ダサかっこいい」って、なんだか惹かれますよね。一生懸命作ったんだろうけど、なぜかズレていたり、時代を感じさせたり。でも、それが逆に個性となって輝いているような、そんな魅力を持つ女性アーティストのPVはたくさん存在します。今回は、そんな「ダサかっこいい」が光る、一度見たら忘れられないであろうPVを7曲ご紹介します。
ニュージーランドの異才、オルダス・ハーディング。「The Barrel」のPVは、一度見たら忘れられない強烈なインパクトを放っています。白塗りの顔に謎めいた衣装を纏った彼女が披露するのは、なんとも表現しがたい独特のダンス。滑らかさと不器用さが入り混じった動きは、見る者に困惑と同時に強い魅力を感じさせます。真剣そのものの表情で踊る彼女の姿はシュールでありながら、その唯一無二の表現はアーティストとしての揺るぎない個性を物語っています。洗練とは真逆の方向性でありながら、見る者の心を掴んで離さない、まさに「ダサかっこいい」の真髄がここにあります。
弱冠10代で世界の音楽シーンを席巻したビリー・アイリッシュ。兄であるフィニアスとの共同作業で生み出される彼女の音楽は、ポップでありながらダークで内省的。「bad guy」のPVは、その独特な世界観を色濃く反映しています。カラフルな背景に不気味な仮面をつけた人々が登場したり、真っ白な部屋で鼻から血を流したりと、一般的なポップスターの映像とは一線を画します。計算された「気持ち悪さ」とでも言うべき演出は、一度見たら脳裏に焼き付き、それが彼女のアーティストとしての強烈な個性となっています。ダサいと感じる人もいるかもしれない、そのぎりぎりのラインを攻める映像が、かえってクールに映る「ダサかっこいい」の代表例と言えるでしょう。
常に時代の最先端をいくポップアイコン、レディー・ガガ。音楽、ファッション、パフォーマンス全てにおいて妥協がなく、自己表現を追求し続ける彼女の「Bad Romance」のPVは、公開当時大きな衝撃を与えました。白を基調とした近未来的なセット、骨を模した衣装、そして度肝を抜くダンスパフォーマンス。クチュールライクな衣装の数々はファッション業界にも大きな影響を与えました。ストーリーはやや難解で、一部には過激な表現も含まれますが、その圧倒的な情報量と完成度はまさに圧巻。ただし、その圧倒的な完成度の中に、一般的には理解されにくい奇抜さや過剰さといった「ダサい」と紙一重の要素が散りばめられており、それが彼女ならではの「ダサかっこよさ」に繋がっています。
ニュージーランド出身で、現在はアメリカを拠点に活動するメリル・ガーバスによるプロジェクト、tUne-yArds。ループマシンやパーカッションを駆使した独創的なサウンドと、力強い歌声が特徴です。「Real Thing」のMVは、そんな彼女のDIY精神とユニークな感性が爆発しています。箱詰めされたマネキンのパーツや、自身の顔が箱に詰められるシュールな映像は、一度見たら忘れられません。手作り感あふれるセットや、意図的に粗さを残した映像編集が、既成概念にとらわれない彼女の音楽性と完璧にマッチし、「ダサかっこいい」魅力を放っています。
アイスランドが生んだ孤高の歌姫、ビョーク。彼女の音楽は、エレクトロニカ、アンビエント、実験音楽など様々なジャンルを横断し、常に進化を続けています。PVもまた、彼女の神秘的で幻想的な世界観を表現するための重要な手段であり、「Human Behaviour」はその初期の代表作です。森の中に迷い込んだビョークが、クマやウサギといった動物と遭遇するストーリーは、まるで絵本の世界のよう。パペットを使ったアナログな表現や、どこか手作り感のある映像は、今の洗練されたCG映像に見慣れた目には新鮮に映り、それが独特の「ダサかっこいい」雰囲気を醸し出しています。
バングラデシュ内戦を逃れてロンドンに移住した経験を持つM.I.A.。そのバックグラウンドは彼女の音楽やリリックに色濃く反映されています。「Paper Planes」は、彼女の代表曲の一つであり、銃声やレジの音をサンプリングした独創的なトラックが特徴です。PVは、チープなアニメーション、コラージュ、そしてM.I.A.本人が様々な場所で気だるげに佇む姿などがモンタージュされており、洗練されているとは言えない映像です。しかし、そのローファイでアングラな雰囲気が、楽曲の持つ反骨精神やストリート感を際立たせ、唯一無二の「ダサかっこいい」世界観を作り出しています。
最後に、意図せずして「ダサかっこいい」の殿堂入りを果たしてしまった、フィンランドのデュオ、Armi & Dannyによる「I Wanna Love You Tender」をご紹介します。1978年に発表されたこの楽曲のPVは、その全てが「ダサい」と言っても過言ではありません。全身スパンコールの衣装、意味不明なバックダンサー、そして合成感丸出しの宇宙空間。真剣にパフォーマンスしているだけに、そのズレたセンスが際立ち、視聴者に強烈なインパクトを与えます。しかし、そのあまりにも潔い「ダサさ」が、逆に清々しさを感じさせ、もはや芸術の域に達していると評価する声も。ある意味、究極の「ダサかっこいい」を体現した、伝説的なPVと言えるでしょう。
この記事では、「ダサい」と「かっこいい」が絶妙にブレンドされた、一度見たら忘れられない女性アーティストたちのPVを7曲ご紹介しました。ビリー・アイリッシュの計算された奇妙さ、レディー・ガガの過剰さ、オルダス・ハーディングのシュールなダンス、tUne-yArdsのDIY精神、ビョークの幻想的なアナログ感、M.I.A.のローファイな雰囲気、そしてArmi & Dannyの究極の「ダサさ」。それぞれのアプローチは異なりますが、共通しているのは、アーティスト自身の強い個性と、既成概念にとらわれない自由な表現への探求心です。
これらのPVは、一般的な「かっこいい」の基準からは外れるかもしれません。しかし、そのズレや違和感が、見る者に強烈なインパクトを与え、忘れられない魅力となっています。「ダサい」と感じる要素があるからこそ、アーティストの人間味や情熱がより強く伝わってくるようにも感じられます。
「ダサかっこいい」という一見矛盾した言葉の裏には、型にはまらない表現の面白さや、自分らしさを貫くことの強さがあります。今回ご紹介したPVを通して、ぜひあなた自身の「ダサかっこいい」の定義を見つけてみてください。そして、彼女たちの創造性と勇気に触れ、新たな音楽や表現の世界への扉を開いてみてはいかがでしょうか。
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