
なぜ倒れない?ピサの斜塔の傾きに隠された奇跡
「イタリアの観光名所といえば?」と聞かれて、多くの人が思い浮かべる「ピサの斜塔」。
イタリアの観光名所として知られる「ピサの斜塔」は、1987年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
正確には、斜塔が建っている広場全体が「ピサのドゥオモ広場」として登録されています。この広場はその美しさから、地元では「奇跡の広場(ピアッツァ・デイ・ミラーコリ)」とも呼ばれており、現在も多くの観光客が訪れる名所となっています。
今回はピサの斜塔の傾きについてのお話になります。
ピサの斜塔って「これ本当に崩れないの…?」」「いつかバタンと倒れるんじゃない?」結論から言うと、今は絶対に倒れないように対策されています。
でも実は、1990年頃には「明日倒れてもおかしくない」というほど危険な状態だったんです。そこから世界中の天才たちが集まり、11年にも及ぶ改修が行われ、「少なくともあと200〜300年は絶対に倒れない」とも言われています。
そもそも、なぜ傾いているの?
理由はシンプルで、建てる場所の地盤が柔らかすぎたからです。
ピサの斜塔がある場所は、昔は川の入り江だったため、地面が粘土や砂でできていて非常に軟弱でした。そのため、重い石造りの塔を建て始めてすぐに、重さに耐えかねて南側に沈み込んでいってしまいました。
なぜ今まで倒れなかったの?造り直そうとは考えなかったの?
地盤のせいで傾いてしまった塔ですが、崩れなかったのは建設に200年もかかったことが大きく影響しています。
1173年に着工したこの塔は、3階まで作った時点で早くも地盤沈下による傾きが始まってしまいます。建築家たちがその対策に頭を悩ませ、工事が難航していた矢先、周辺地域での戦争が激化したことで、国全体がそれどころではなくなり、工事は100年近くストップすることになりました。
この「戦争による長期の中断」という偶然こそが、結果的に塔が倒壊しなかった最大の理由となります。
当時の人々は知る由もありませんでしたが、現代の科学的な分析により、放置されている間に未完成の塔の重みによって下の柔らかい地盤がじわじわと時間をかけて踏み固められ、倒れにくい強さが生まれていたことが判明しています。もし傾いたまま一気に上まで建て進めていたら、重さに耐えかねて途中で確実に倒壊していました。
その後、戦争が落ち着いたことでようやく工事が再開されるのですが、ここで「なぜ傾いているのに、一度解体してゼロから建て直さなかったのか」という疑問が浮かびます。
当時の人たちがそのまま続きを建てた背景には、財政面と政治的な事情がありました。すでに最高級の白い大理石を大量に使っており、やり直すには莫大な予算と時間が無駄になること、そして地中海貿易で栄えていたピサの国力をライバル国に見せつける国家プロジェクトだったため、途中で諦めるわけにはいかなかったのです。
なんとしてでも今の状態から完成させたいという状況のなか、100年間倒れずに建ち続けていた事実が大きな後押しとなりました。「土台がこれだけ耐えているのなら、一度解体しなくても、これから上の階を作る際に傾きを修正していけば問題ない」と当時の建築家たちは判断したのです。
とはいえ、そのまま真っ直ぐ上に建てては倒れてしまうため、彼らは工事を進めるにあたって特別な対策を施しました。上の階に行くにつれて「傾いている側と反対の石(あるいは柱)を高く、厚くする」ことで、全体のバランスを無理やり調整していったのです。
この傾きを相殺しようとした対策の結果、よーく見るとピサの斜塔は真っ直ぐではなく、中心がわずかにカーブした形をしています。このように重心のバランスを細かく調整する対策を重ねることで、最終的な完成まで建て進められました。
完成後、また倒壊の危機
こうして1372年にようやく完成を迎えたピサの斜塔ですが、傾きを補正する対策を施したものの、地盤沈下そのものが止まったわけではありませんでした。完成後も、塔は毎年わずかずつ、確実に傾きを深めていったのです。
20世紀に入ると、その傾斜はさらに加速します。周辺の地下水を汲み上げたことで地盤がさらに緩み、塔の傾きはついに垂直から約5.5度、最上階の段階で中心から4メートル以上もズレるという危険な領域に達してしまいました。
この限界寸前の状態で迎えたのが、1990年です。
前年の1989年、イタリア国内で別の古い塔(パヴィアの民事塔)が突然崩壊し、死傷者が出る大事故が起きました。これをきっかけにピサの斜塔の安全性も改めて徹底的に調査された結果、石材に凄まじい負荷がかかっており、「明日倒れてもおかしくない」という極めて致命的なデータが弾き出されたのです。
事態を重く見たイタリア政府は、1990年にピサの斜塔を閉鎖し、観光客の立ち入りを禁止して倒壊防止のための改修工事に着手しました。
現代の技術が救った!11年におよぶ大改修
1990年から始まった改修工事では、塔そのものをいじるのではなく、原因である「地盤」に直接アプローチする工法がとられました。
まず、これ以上傾かないように塔の北側に600トンの鉛の重りを載せて一時的にバランスをとった後、傾いている側とは反対(北側)の地下の土を少しずつ抜き取っていく「地盤掘削工法」が実施されました。土を抜いた部分が自重でゆっくりと沈むことで、塔の傾きを元に戻そうという計画です。
この工事は慎重に進められ、約10年をかけて塔の傾きを約40センチメートル(角度にして約0.5度)戻すことに成功しました。これにより、塔の構造にかかる負荷が大幅に軽減され、今後数百年は倒壊の危険がない安全な状態が確保されたと発表されています。
安全性が確認されたことで、2001年12月にピサの斜塔は一般公開を再開し、現在もその姿を維持しています。
** Piazza dei Miracoli opens its doors in the evening: from 17 June to 31 August 2026 until 22:30 / OPERA DELLA PRIMAZIALE PISANA **

pon-poo
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