カイコは野生には存在せず、人間に世話されないと生きていけない。
カイコは、絹糸を紡ぐことで知られる昆虫です。しかし、彼らは驚くべきことに、野生では生き残ることができません。言い換えれば、カイコは人間による手厚い介護なしには、その短い生涯を全うできないのです。
カイコは、もともとはクワコという蛾の一種を家畜化したものと考えられています。数千年にわたる人間の選択的育種の結果、カイコは野生のクワコとは大きく異なる性質を持つようになりました。
最も顕著な違いは、カイコの飛行能力の喪失です。野生の蛾であれば、天敵から逃れたり、新しい食料源を探したりするために飛び回る必要がありますが、カイコは飛ぶことができません。これは、人間がより多くの絹糸を生産する個体を選抜してきた結果、飛行に必要な筋肉が退化したためと考えられています。
また、カイコは餌となるクワの葉を自分で探すことも苦手です。人間が常に新鮮なクワの葉を与えてくれることを前提としているため、自力で餌を探す能力は著しく低下しています。
さらに、カイコの幼虫は保護色を持っていません。野生の昆虫は、天敵から身を守るために周囲の環境に溶け込むように擬態しますが、カイコの幼虫は白く目立つため、鳥などの天敵に見つかりやすいのです。
これらの要因が組み合わさることで、カイコは人間による保護なしには生き残ることができない、極めて特殊な昆虫となったのです。カイコは、人間と昆虫の関係における、興味深い事例と言えるでしょう。
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