アメリカ合衆国に皇帝がいたことがある、というのは一見すると突拍子もない話です。民主主義の国であるアメリカに、なぜ皇帝が存在し得たのでしょうか?
実は、これは文字通りの意味での皇帝ではなく、自称皇帝の話です。
その人物とは、ジョシュア・ノートン(Joshua Norton)。1819年頃にイギリスで生まれた彼は、1849年にアメリカ、サンフランシスコに移住し、実業家として成功を目指しました。しかし、ペルーからの米の輸入を独占しようとした試みが失敗し、彼は破産してしまいます。
1859年、彼は突如として「ノートン1世、アメリカ合衆国皇帝」を宣言します。この宣言は新聞に掲載され、サンフランシスコ市民は彼を暖かく迎え入れました。
ノートン帝は、南北戦争の終結や、国内の鉄道建設を指示するなど、様々な勅令を発布しました。もちろん、これらの勅令に法的拘束力はありません。しかし、サンフランシスコの人々は、彼を本物の皇帝のように扱い、レストランでは無料で食事を提供し、劇場では特別席を用意しました。彼は、街の平和と繁栄を祈り、市民から愛される存在だったのです。
ノートン帝は、1880年に路上で倒れ、亡くなりました。彼の葬儀には、数万人が参列し、その死はサンフランシスコ全体で悼まれました。
つまり、アメリカ合衆国に「皇帝」がいたというのは、正式な意味での皇帝ではなく、市民に愛された自称皇帝、ノートン1世のことだったのです。彼の存在は、当時の社会の寛容さや、人々のユーモア感覚を物語っています。
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