島崎藤村のスキャンダルは、日本の近代文学史における暗部の一つとして語り継がれています。
藤村は、1919年に発表した小説『新生』において、自身の姪である駒子の告白を基にしたとされる、禁断の愛を描きました。小説では、主人公の「三沢耕平」が姪の「宮本清子」を妊娠させてしまうという衝撃的な展開が描かれています。
しかし、事実は小説よりも複雑でした。藤村は、1913年に姪との関係を持ち、その結果、姪は妊娠。当時の倫理観からすれば許されない行為であり、社会的なスキャンダルとなることは避けられませんでした。
そのため、藤村は事態を収拾するため、駒子を堕胎させ、自身はフランスへ逃れるように渡航しました。この海外逃亡は、スキャンダルからの逃避であると同時に、自身の文学活動を続けるための苦渋の決断でもあったと考えられています。
帰国後、藤村はこの経験を基に『新生』を執筆し、自らの罪を告白する形で世に問いました。しかし、小説の内容は事実を脚色したものであり、駒子の視点はほとんど描かれていません。
この事件は、藤村の文学的評価を大きく揺るがすとともに、近代日本の家族制度や倫理観に深く切り込む問題提起となりました。
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