ネロは、ローマ帝国史上屈指の暴君として悪名高い人物です。しかし、彼の治世の初期は、意外にも平和で安定したものでした。
ネロは紀元54年にわずか16歳で皇帝に即位しました。若さゆえに、当初は母親である小アグリッピナや、セネカ、ブルッスといった有能な側近たちの影響下で政治を行いました。
この時期のネロは、民衆の歓心を買うために減税を行ったり、剣闘士の試合を中止したり、貧困層への救済策を実施したりしました。元老院との協調も重視し、公共事業にも積極的に投資するなど、まるで模範的な君主のような振る舞いを見せていたのです。
しかし、権力への執着と自己顕示欲が強いネロは、徐々にその本性を現し始めます。母親アグリッピナを暗殺し、セネカやブルッスも失脚させ、側近の影響を排除して独裁色を強めていきました。
5年間の善政期間の後、ネロは放火、浪費、芸術への陶酔、そして自身の神格化を進め、ローマ帝国の歴史に名を残す暴君へと変貌を遂げたのです。初期の慈悲深さは、まるで仮面の下に隠されていたかのように、消え去ってしまいました。
▶︎いつもありがとう!
▶︎ SNS