トルコやロシアの近くに位置するアゼルバイジャン。カスピ海に面したこの国は、ヨーロッパとアジアが交差する独特の文化や歴史を持っています。そんなアゼルバイジャンには、自然の驚異を体感できる特別なスポットがあります。その名も「ヤナル・ダグ(燃える山)」です。
この場所では、地面から天然ガスが湧き出し、燃え続ける炎が絶えたことがありません。どんなに雨が降っても、雪が積もっても炎は消えない。その光景は、自然が生み出した驚きそのものです。この不思議な現象は、「火の国」として知られるアゼルバイジャンの象徴でもあります。
アゼルバイジャンでは、火はただの自然現象以上の存在です。古代にはゾロアスター教という宗教が栄え、火は「神聖なもの」として人々から深く崇められていました。その歴史を今に伝えるのが、バクー近郊にある「アテシュギャーフ拝火教寺院」。かつてこの寺院では、地中から噴き出す天然ガスによって永遠に燃え続ける炎がありました。その神秘的な光景を想像するだけでも、当時の人々にとって火がどれほど特別な存在だったかを感じられます。
そんなアゼルバイジャンには、もうひとつ「心を満たす火」があります。それが料理です。国民食ともいえる「プロフ(Pilaf)」は香ばしいスパイスと柔らかいお肉が絶妙に調和した炊き込みご飯のような料理で、地元の人々だけでなく訪れる観光客にも大人気。ゾロアスター教時代の名残を感じさせるような豊かな香りが、火を使った文化とどこか重なります。
夜、ヤナル・ダグを訪れると、幻想的な光景に心を奪われるはずです。暗闇の中で燃え続けるオレンジ色の炎が揺れ動く様子は、まるで地球が息づいているかのような感覚を呼び起こします。この不思議な場所に立つと、自然の力とその偉大さに、しみじみと感動させられます。
そして観光の後には、地元のレストランで「ドルマ(Dolma)」を試してみるのもおすすめ。ブドウの葉に包まれたジューシーなお肉やご飯は、まさにアゼルバイジャンらしい素朴で温かみのある味わい。身体も心も温まる食体験が、ヤナル・ダグでの感動をさらに深めてくれるでしょう。
ヤナル・ダグはアゼルバイジャンの首都バクーから車で約30分とアクセスも良好です。タクシーや配車アプリを使えば手軽に訪れることができますし、観光ツアーに参加してアテシュギャーフ拝火教寺院と組み合わせるのもおすすめです。
移動中のお腹が空いたら、街中で売られている「ラヴァシュ(Lavash)」という薄いパンを手に入れてみてください。ほんのりとした香ばしさともちもちの食感がたまりません。ちょっとした間食や旅のお供にぴったりです。
ヤナル・ダグの燃え続ける炎は、自然の力が織りなす奇跡のような存在です。その炎を前にすると、遠い昔から人々が火とともに生きてきた歴史が、不思議と身近に感じられるはず。そしてアゼルバイジャンの料理も、この国の火の文化と同じくらい人々の心を満たしてくれます。次の旅先に、この「火の国」を選んでみてはいかがでしょうか?
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