横浜DeNAベイスターズで研ぎ澄まされた野球理論と哲学的な思考から「投げる哲学者」と呼ばれ、多くのファンを魅了した今永昇太投手が、2024年シーズンにメジャーリーグのマウンドに鮮烈な足跡を刻みました。そして満を持して迎えた2025年シーズン、シカゴ・カブスの一員として、その独特なアプローチと卓越したピッチングで更なる飛躍を目指しています。異国の地でも注目を集める今永投手は、どのような言葉で自身の野球観を語り、ファンを魅了しているのでしょうか。2024シーズンMLBにおける「哲学者の言葉」に迫ります。
NPBでの確かな実績に加え、特に国際大会(WBCなど)での圧巻のピッチングが高く評価された今永投手は、2023年オフにポスティングシステムを利用してMLBへの挑戦を決断しました。多くのメジャー球団が獲得に乗り出す中、最終的にシカゴ・カブスとの契約が合意に至りました。その契約規模は4年総額5300万ドル(日本円で約77億円、球団オプションを含め最大5年8000万ドル)と報じられています。同じく日本人野手である鈴木誠也選手が所属するカブスを選んだことは、異文化への適応という点でも彼にとって心強い要素となったことでしょう。背番号には、カブスで長く活躍し、108年ぶりのワールドシリーズ制覇に貢献した名選手ベン・ゾブリスト氏が使用していた「18」を選択。この選択には、カブスの歴史への敬意が込められていると伝えられています。
鳴り物入りでの移籍ではありましたが、MLBでの成功は決して保証されていませんでした。しかし、今永投手はそんな周囲の懸念を吹き飛ばすような、衝撃的なメジャーデビューを飾りました。2024年4月1日(日本時間2日)、本拠地リグレー・フィールドでのコロラド・ロッキーズ戦に先発。緊張感漂うマウンドで、6回を投げ被安打わずか2、無失点、そして9奪三振という圧巻の内容でメジャー初勝利を挙げました。メジャー初登板で無失点、無四球、9奪三振以上を記録したのは、1901年以降のMLB史上でもわずか2人目という、歴史的な快挙を成し遂げ、その名をメジャーの歴史に刻みました。
彼の快進撃はこれに留まりません。開幕から安定したピッチングを続け、特にシーズンの序盤には驚異的な防御率を記録しました。開幕から9先発時点での防御率0.84は、防御率が公式記録となった1913年以降のメジャーリーグにおいて、史上最高の記録となりました。この歴史的なスタートは、米国の野球界に大きな衝撃を与え、「イマナガ」の名前は瞬く間に全米に知れ渡りました。最終的に2024年シーズンは15勝を挙げ、ナショナル・リーグのサイ・ヤング賞投票でも上位に入るなど、期待を大きく上回るルーキーイヤーとなりました。
輝かしい2024年シーズンを経て、今永投手は2025年シーズン、2年目のジンクス打破と更なる飛躍を目指します。スプリングトレーニングでは、昨季の成功を支えた高めへのストレートに加え、変化球の精度向上や新たな投球フォームの探求など、オフシーズンから取り組んできた課題の調整に重点を置いていると伝えられています。開幕投手への内定も報じられており、チームからの厚い信頼がうかがえます。MLBというレベルの高い舞台で通用し続けるためには、常に進化が必要であるという認識のもと、彼は日々研鑽を積んでいます。
今永投手の魅力は、マウンド上でのピッチングだけではありません。2024年シーズンに衝撃的なルーキーイヤーを送り、満を持して迎えた2025年シーズンにおいても、試合後の記者会見やインタビューで語られる彼の言葉は、MLBのメディアやファンの間でも大きな注目を集め続けています。単なる試合の振り返りにとどまらない、野球に対する深い洞察や、時折見せるユーモアは、他の多くの選手とは異なる、ユニークな存在として受け止められています。
特に彼の野球哲学や人柄が垣間見える印象的なコメントをいくつかご紹介します。これらの多くは2024年シーズンに語られたものですが、彼の根幹にある考え方を示すものとして、現在も彼の人物像を語る上で欠かせない言葉となっています。
本拠地リグレー・フィールドでの熱狂的な大歓声について触れた、ファンへの感謝と新しい環境を楽しむ今永投手らしいジョークです。このコメントは、2024年4月15日(日本時間16日)のダイヤモンドバックス戦後、リグレー・フィールドの熱狂的な雰囲気に触れた際に飛び出したものです。メジャーの舞台で野球ができる喜びと、ファンの声援を力に変えている様子が伝わる、今永投手らしいユーモアあふれる一言でした。
メジャー移籍後、初めて対戦した特定の強打者について質問された際に、ユーモアを交えて回答し、記者会見場を和ませました。真顔で放たれたこのジョークは、その場の空気を一瞬で和ませる彼のコミュニケーション能力の高さを物語っています。
自身の対左打者への好成績に関するデータを知った際の、独特な表現です。データに囚われすぎることへの自己認識をユーモアで包んでいます。自身の意外な好成績を知った驚きと同時に、データが意識に影響を与える可能性に言及する、哲学者らしい洞察が込められています。
これは、完璧な状態ではなくても、ある程度の不安を抱えている方が集中力が高まり、良いパフォーマンスに繋がるという自己分析です。2024年3月のオープン戦で語られました。自信満々の時ほど根拠のない投球をしてしまいがちだが、不安な時は根拠をしっかり立てて投げられるため、それが彼にとってパフォーマンスを出しやすいマインドセットであると説明しています。
どれだけ素晴らしい投球をしても慢心せず、常に冷静に自己分析を行う今永投手らしい、謙虚さと探求心を表す言葉です。シーズン序盤の好調時に自身の評価について問われた際など、複数の場面で彼の基本的な考え方として語られています。現状に満足せず、常に向上を目指す彼の姿勢がうかがえます。
自己評価よりも他者からの客観的な評価を重視するという、地に足のついた考え方を示した発言です。これもまた、自身の成績やピッチングに対する評価を問われた際などに語られるコメントです。他者からの視点を受け入れ、成長の糧とする彼の姿勢が表れています。
メジャーのマウンドでの感覚について語る中で、野球というスポーツの本質に触れた言葉です。これは、無失点に抑えることの難しさと重要性を端的に表しています。自身のピッチングの目標をシンプルかつ明確に捉えていることがわかります。
「幸運の女神は前髪しかない」という格言を引き合いに出し、チャンスを掴むための心構えを語ったコメントです。これは、日々の準備がいかに重要であるかを問われた際などに語られる彼の哲学です。運任せにせず、常に最善の準備を尽くすことの重要性を説いています。
2025年シーズンの開幕投手を務めるにあたり、前日の会見で語られた言葉です。ファンやチームへの感謝とともに、プロフェッショナルとしての最低限かつ最も重要な責任である「健康な状態で試合に臨むこと」を意識していることが伝わります。
これらのコメントは、今永投手が単なる優秀な野球選手ではなく、自身の思考を言語化し、周囲とコミュニケーションを取る能力にも長けていることを示しています。米国のメディアは、彼の言葉を通じてその「哲学」に触れ、選手としての深みを理解しようとしています。2025年シーズン、そしてそれ以降も、彼の言葉が野球界にどのような示唆をもたらすか注目が集まります。
今永投手の投球は、その哲学的思考と密接に結びついています。特に彼のストレートは、MLBのスカウトやデータ分析家たちの間で大きな話題となりました。平均球速はMLB全体で見れば突出していませんが、彼のストレートは「ノビがある」「浮き上がってくるように見える」と形容され、打者がその速度以上に差し込まれたり、ファウルにしたりすることが多いのです。
その秘密は、彼の低いリリースポイントから投げられる高いスピン量のボールにあります。これにより、本来であれば重力で落ちていくボールが、物理的な法則に逆らうかのように見え、打者の予想よりも高い位置を通過します。MLBのデータ分析ツール「Statcast」でも、彼のストレートの「ホップ成分」はリーグ上位に位置すると分析されています。
さらに、今永投手はMLB移籍後、NPB時代とは異なり、積極的にストレートを高めに投げるというアプローチを取り入れています。これは、アッパースイングの打者が多いMLBにおいて、高い位置で回転の良いストレートを捉えることが難しいというデータに基づいた、合理的な判断です。自身の投球スタイルを分析し、新しい環境に合わせて柔軟に戦術を変化させる。これもまた、「投げる哲学者」たる所以と言えるでしょう。
今永投手は、マウンド上での活躍だけでなく、チームの一員としても瞬く間に溶け込んでいます。積極的なコミュニケーション、チームメイトへの敬意、そして真摯な野球への姿勢は、カブス内で高く評価されています。東京で行われたチームイベントでの、日本の文化を尊重するようチームメイトに促すユーモラスなスピーチは、チームの結束を深めるきっかけとなったと報じられています。
クレイグ・カウンセル監督は、今永投手を「我々のベストピッチャーの一人、いやベストプレイヤーだ」と称賛し、彼のパフォーマンスとチームへの貢献度を高く評価しています。チームメイトからも「彼がマウンドであれだけやってくれているんだから、我々が感謝する必要はない」といった声が聞かれるなど、互いにリスペクトし合う良好な関係が築かれています。2025年シーズンも、彼の存在はカブスのチームケミストリーにおいて重要な要素となるでしょう。
MLBという最高峰の舞台で、今永昇太投手はその才能と「投げる哲学」を開花させています。数字で示される圧倒的な結果に加え、彼の言葉や野球へのアプローチは、多くの人々に影響を与えています。技術と思考が高い次元で融合した彼のピッチングは、今後もMLBで研究され、分析されていくことでしょう。
「投げる哲学者」がMLBでどのような新たな歴史を刻み、その野球哲学がどのように進化していくのか。シカゴ、そして全米の野球ファンは、2025年シーズン以降も、その一挙手一投足から目が離せないでいます。
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